【就労B型 ブランディング事例】ものづくりを通して社会と障がい者を結ぶ「きびるアクション」
世界各地の民族衣装や伝統的な織物で、女性向けのエスニックな布バッグを制作販売する「kibi-ru ACTION (きびるアクション)」。
バッグ制作時に出るはぎれを、就労 B 型や生活介護で加工し、新たなアップサイクル商 品を制作。百貨店やセレクトショップでのポップアップ、EC サイトとのスポンサー契約、アパレルメーカーと のコラボレーションなど、年々、活躍の場を広げています。代表の武堂詠子さんのインタビュー。
ものづくりを 行っている就労 B 型事業所に読んでいただけたら幸いです。
-kibi-ru ACTION(きびるアクション)とはどういうブランドですか?
世界の民族衣装をつないだ「ご縁を結ぶ」バッグ。
きびるアクションの「きびる」とは、故郷・福岡の方言で「結ぶ」という意味。人と人、モノとモノを結び合 わせて、ストーリーのあるものづくりをしています。
使用している布は、アジア、中南米、アフリカの民族衣装や伝統的な織物。日本でいう着物のようなものです。 「海外に行って仕入れるのですか?」とよく聞かれますが、すべて国内の布コレクターから仕入れたもの。また、 タイ、グアテマラ、エクアドルからは、現地で子どもや女性を支援している国際ボランティア団体から仕入れて います。
もともと海外の布は色や柄が独特で、日本ではめずらしいものばかり。その布を大陸ごとに組み合わせなが ら、バッグの型に落とし込み、いろどりあふれる作品をつくっています。
お客様からよく聞かれるのが「kibi-ru ACTION のバッグをもつと、よく人に声をかけられる」という話。カフ ェで知らない方から声をかけられたり、コミュニケーションが苦手な方が職場で人気者になったりと、バッグを きっかけにいろいろなご縁が広がっています。
-障がい福祉事業所と協業をはじめたきっかけはなんですか?
自主制作品にデザイン性をプラスしたかった。
駅構内や公園などで行われている、福祉の手作り市を見るたびに、残念な思いがありました。同じ手作業でつ くられたものがどうしてこんなに安く売られているのか、デザイン性が不足しているものも多く見られます。 プロのデザイナーが加われば、もっといい商品ができる。同じ手間をかけるなら福祉業界以外にも認められる ものをつくればいいのに。そう思って、自主制作品を販売している近所の事業所にアポイントなしで飛び込み、 一緒にやりませんかと交渉しました。かなり無謀でしたね(笑)。
それから2ヶ月後、一緒にものづくりをすることになります。別ルートで交渉を進めていた東京都内の事業所 とも話が決まり、あわせて2軒の事業所と協業がスタート。いまから 3 年前の 2019 年のことです。
事業所にお願いしているのは、バッグ制作中に出るはぎれの加工。はぎれを指定のサイズに切り揃え、下地とな る薄い布に糊で貼り付けていく作業です。糊をつけすぎないこと、はぎれとはぎれは1cm ほど重ね合わせるこ となど、かなり細かいオーダーを出しています。
最初はハサミがもてない、糊がうまくつけられない、布の表裏をまちがえる。正三角形はカットできても、二等 辺三角形はむずかしいなど、次々に出てくる課題に頭を悩ます日もありました。でも、スタッフの方々のすばら しいサポートで、1 年経つころにはほとんど手直しすることがなくなりました。
もう一つの事業所には、さをり織りをオーダーしています。はぎれを紐状に裂いて織物に混ぜて再利用。こちら もスタッフと利用者さんの二人三脚で行われ、できた素材はバッグや小物入れなどにして販売。利用者さんたち の自由なセンスを生かした商品づくりを行なっています。
きびるアクションがメディアに取り上げられるようになった成功の秘訣を教えてください
ストーリーとして、背景をちゃんと伝えたこと。
2019 年の夏、ストアーズ(インターネットビジネス運営会社)が主催する、「STORES ASSIST PROGRAM」 に応募しました。才能ある個人やスモールチームに、ノウハウの提供や経済的支援を行うというものです。 全国各地から 120 名以上が応募するなか、障がい者福祉事業所と行うサスティナブルなものづくりへの支援を 訴えた私は、最終審査を通過。1年間のスポンサー契約をつかみとりました。 さらに、その秋、『ファッション業界の廃棄問題をクリエイティビティで解決する』リメイククリエイター大賞 (主催:MODALAVA 株式会社)に、福祉とのコラボ作品を応募。およそ 270 点の応募作品の中から、見事、主催者賞を受賞しました。
MODALAVA 賞受賞作品。6種類の衣類をリメイク
その後も、アパレルブランドと革鞄会社とのコラボレーションを発表したり、その作品が香港の有名ファッシ ョンショーで起用されたりと、福祉との共作は私自身も驚くうれしい展開へ。こうした実績から、ストアーズの 推薦で日経新聞 MJ の一面に掲載いただきました。福祉の情報サイトや地元ケーブルテレビ、市議会だよりでも 取り上げていただきました。
-就労 B 型事業所の声を教えてください
喜んでくれる人がいるから、やる気がアップ。
障がい者福祉事業所と制作する作品は、「CUT(カット)」というブランド名で販売しています。CUT は、ハサミを使う作業が多いこと、また、社会課題に「切り込む」という意味で名付けたものです。ロゴマークは利用者さんたちが描いたイラストをコラージュしました。
CUT の商品を初披露した 2019 年の夏の展示会では、6日間の開催で 200 名以上の方にご来場いただき、顧客 さまをはじめ、利用者さんやそのご家族にも作品を見ていただくことができました。 「これをうちの子が作ったんですか!」とうれしそうなご家族、「いつもお世話になっています」「こちらこそ お世話になっています」と、何度も何度も「ありがとう」が飛び交いました。
「息子がきびるの作業日を楽しみにしていて、電車が止まった日も歩いて通所したんですよ!」という方や、 「楽しい仕事をありがとうございます」とメッセージ付きのお花をもってきてくれた利用者さん。やってよかっ たと、心から思えた時間でした。
生活介護施設のスタッフからは、「利用者さんの新しい得意が発見できた」「お昼休みでもさをり織をやりたが る子が出てきた」などと聞きます。 B 型事業所のスタッフからは、「コンテストの入賞を知ったとき、利用者さんのモチベーションが一気にあが った。掃除など、別の仕事にも力が入り、いい刺激になった。保護者の方からは、子どもが関わったものが、一 般の商品として販売されているのがうれしいといわれる」などといわれます。
「利用者さんは、お金をもらうことより、喜んでくれる人がいることの方が達成感を感じている」といわれた ときは、とても感慨深かったです。
障がい者就労 A 型 B 型事業者へ一言お願いします
ものづくりを通して、社会との接点を広げる
私のまわりのクリエイターたちは、福祉施設との協業に関心が高い人が多いです。どうやったらつながれるの か、どうやって発注したらいいのかなど、よく相談を受けます。 クリエイターと手を組めば、クオリティーが高いものができるし、販路も広がり、福祉業界以外とのつながり も生まれます。
自主制作品をブラッシュアップしたいと思われましたら、お気軽にご相談ください。私の目標は、障がい者と 社会との接点を増やすこと。これからも、ものづくりを通して新しい世界を広げるお手伝いをしていきたいと思 っています。
【きびるアクション ご縁を結ぶバッグの販売先】
<オンライン>
https://cut-revival.stores.jp/
<展示会情報>
2023 年 2 月 7 日(火)〜2 月 12 日(日)
kibi-ru ACTION BAG 展
東京都中央区銀座 5-5-9 阿部ビル 4 階
【武堂詠子さんプロフィール】
日本デザイナー学院グラフィックデザイン科を卒業後、編集プロダクションに勤務。2013 年「きびるアクショ ン」を開業し、世界各地の少数民族の布や国内の古布・リユース素材を組み合わせたオンリーワンバッグを制 作。販売を伴うイベントの企画・コーディネートにも取り組んでいる。2019 年から福祉施設との協業をスター ト。
お問い合わせ先:
アトリエ =埼玉県所沢市くすのき台
連絡先 =080-5657-5838(平日 10:00〜17:00)
【インタビューアー】
福祉バンク株式会社
東京都新宿区西新宿三丁目3番 13号 西新宿水間ビル6階
~障がい者の個性に合わせたオシゴトを~
TEL:03-6868-5725
Mail:shiraishi@fukushibank.co.jp
担当:白石直之