【就労B型】革製品の独自ブランド制作と療育で自立を促す「革工房torogi」
革製品の独自のアウトドアブランド「RAi」、革製品ブランド「torogi」の製造販売に挑戦している、大阪市東淀川区の障がい者就労継続支援B型事業所「torogi」さんをインタビューしました。
torogiさんの代表者である松田加代子さんは、従来の一般的なB型だけでは段ボール組み立てや内職といった工賃が低い作業が多く、利用者である障がい者の職務レベルも上がりづらいと感じていました。ご自身のお子さんも障がいがあり、子供の選択の幅を広げるためにもB型の在り方を広げていきたいと考えて起業。子育てをしている中でも、コミュニケーションは少し苦手かもしれないが、集中力はずば抜けて高かったり、障がい中に強みがあり特有の個性と可能性を感じていました。
さらに、torogiでは療育の時間もあります。B型だからといって、仕事だけの支援ではなく、日々の生活の豊かにする療育や教育も行って、障がい者利用者の生きる力を身に付ける、そんなご支援を行っている企業さんです。
障がいを強みにした技術力を持ち想いのある革製品や、一生大事に使える革商品など作っていってほしいなと思います。
インタビューアー:白石 直之
事業の内容を教えてください
Torogi事業所は、障がい福祉就労継続B型の事業所になります。
大阪市東淀川区にある、東淀川駅からも徒歩1分の場所にあります。送迎も行っています。
革製品の製造をメインにしている事業所ですが、製造だけでなく販売するための販売サイト運営、SNSの構築やクラウドファンディングの準備も利用者さんと一緒作っているところです。利用者の希望に応じて革製品の企画などよりクリエイティブなこともやっていきたいと思っています。集中力があったり、自立を目指したい知的障がいの方がメインの事業所になります。
起業のきっかけを教えてください
一つは、私の娘も障がいを持っていることです。アスペルガーという発達障がいの一つで、いわゆるグレーゾーンと言われる軽度で、特別支援学級に行くほどでもなかったのですが、世の中の生きづらさを感じていました。どういう風に育てていこうと考えて、無理に学校に行かせるわけでもなく、中学校もほぼ行かない事を決断して、高校も通信教育にしていました。
将来の仕事はどうなるんだろうと思っていたんですが、彼女の方ができることもたくさんあったり、可能性も感じていました。他のアスペルガーや知的障がいの方もですが、すっごい集中力があって、一つのことでもずっと行えたり、実は障がいが強みになるのではと思いました。
もう一つは、自立を目指している就労継続支援B型の施設はあまりないように感じたためです。封詰めや箱折りといった簡単なオシゴトとレクリエーションなどを通じて、楽しく作業を行い、利用者さんも充実していて良い施設はありましたが、自立を目指したい方向けではなく、楽しく通って頂く施設が多い事に違和感を感じていました。もっと賃金を高くできないか、発達障害や知的障がいを持った方の可能性を伸ばし、仕事の楽しさや遣り甲斐を感じてもらいながら生活を豊かにするなど、もっとできることもあるのではないかと思って、起業を考えました。
革製品をメインにしているのはなぜですか?
モノづくりはすごく考える、クリエイトするところもあって、とにかく楽しいこと。障がい者の方は集中力がある方も多いので、おそらくあっていると思います。また、革製品はしっかりした物を制作出来るようになれば付加価値もあり価格も高単価が可能と思ったからです。
例えば、革製造は、作業が複雑な工程が一杯あります。型を抜く、カービング、コバ、手染めなど工程も多くて、商品の数も無数。利用者さんが得意とするところがきっと見つかると思っています。
販売のオシゴトも、売るためにしないといけない企画、写真の撮り方、WEBの仕組み、掲載の仕方などがあると思います。自分で好きな絵を描いて販売することもできるようになってくれたらいいなと思っています。
スタッフの子供が通う障がい児の為の放課後dayサービスの子供(主に高校生の年代の子)たちにtorogiの職業体験イベントに参加してもらったときの話ですが、イベントはパッチワークやキーホルダーといった、革を使った小物を作るものだったのです。参加した子供たちがずっと、目を輝かせて集中して作っていたことが印象的です。卒業したらここで働きたい!って言ってくれたことがとても印象的でした。引率していただいた先生からも今までこんな笑顔は見たことないと言っていただき、より一層、知的障がいを持った子供たちが、高校を卒業した後に通える自立を目指すB型事業所としての役割を考え、日々スタッフと支援力を付けるために頑張っております。
革製品の中でもアウトドアのブランドとしているのはなぜでしょうか?
アウトドアを通して自然の中で人をふれあいう事で、人との垣根が低くなって、コミュニケーションをとることなどで成長が早くなると言われています。危険を心配して障がい者の方はアウトドアにチャレンジする機会が少ない傾向にありますが、支援学校の先生方と話していても、発達を促すのは運動が有効だと仰っていました。体力がない子も多いので、アウトドアを通して身体を動かしたり自己表現をしたり出来ると思い、アウトドアブランドを作りたいと思いました。
革製品のつくり方など、技術面はどうしているのですか?
元々の協業仲間でもある、革製品ブランド「Lilyleather Design」の大城社長が技術指導をしてくださっています。弊社の指導員も対応できる商品を広げるために今は週に3日くらい、熱心に練習してくれています。
現在は、商品企画は、大城社長を交えて行っていますが、やりたい利用者さんが来てくれれば、一緒に考えてもらおうと思います。障がいがあるからと言って優しくするわけではなく、支援はしつつもちゃんと社会に認められる商品を作っていきたいです。
就労支援だけでなく、療育支援もしたいと伺いました。詳しく教えてください。
就労支援だけ行うのが、本当の意味でその人たちの自立つながるのかというと、やっぱりそこだけでは足らないなぁと思いました。そこで、事業所内にアクティビティの時間というのを明確に作りました。「生きる力をつける学びの場」というタイトルで読み書き計算と運動の療育の時間を14時~15時の毎日1時間を取ることにしています。
いつか自立できるように支援していく。仕事ができる、電車に乗れる、ちょっとした買い物もできる、そういう生活も含めた支援を目標としています。
ちなみに、B型事業所がどこまでやっていいのか気になったので、支援機関にも確認しました。現状やっているところはないが、B型でもやるべきことである。A型ではなくB型の場合は就労だけを支援するものではなく、むしろ自立に向けた療育や学習面の支援も期待しているとのことだったので、胸を張って取り組んでいます。
従業員を集めるのは大変と聞きますが、採用はどうしましたか?
そういわれますよね。それが、勝手に集まったんです。笑ほんと人のご縁で、全員が紹介なんです。
サビ管は私です。勤めていたB型事業所へ面接に来た作業療法士の方を、torogiの方が合うからと紹介いただいたり、革の技術指導をしてくださっている大城さんが障がい者の子供を持つお父さんを口説いて、会社を辞めてきてくれたり、私の中学の恩師が特別支援学級で働いていて、その経験を活かして手伝ってくれていたり、大学生の私の息子も想いを伝えたら、働いてくれることになりました。
みんな想いを伝えたら共感してくれて、それぞれも想いをもって働いてくれています。
今後、事業はどうしていきたいですか?
想いとしては、福祉や社会貢献がどうのとか大きいことは思っていなくて、利用者の方が、毎日が笑顔で楽しんでいてほしいです。いろんな形があると思いますが、その一助として、革製品のものづくりで働けることの幸せや、もっと豊な生き方の可能性が広がることに貢献できたらと思っています。
最後に、未来の利用者の方へ一言お願いします
自立に向けて頑張ってみたい、モノづくりにチャレンジしてみたい方、特に知的障がいを持っている方にはご相談に乗れると思います。少しでもご興味頂けるなら、随時革づくり体験会や、事業所の見学に来てもらえたらと思います。メールでも電話でもお気軽にご連絡ください。
【インタビュー企業情報、お問い合わせ先】
会社名 :合同会社 Happiness
事業所名 :就労継続支援B型支援所 革工房 torogi
サービス内容 :就労継続支援B型(療育あり)、事業所番号 (2713002471)
住所 :〒533-0031
大阪府大阪市東淀川区西淡路1-17-12
コーポフェニックス2F2号
ホームページ :https://torogi.net/
主な対象者 :知的障がい・発達障がい者
お問い合わせ先
担当者 :松田加代子
TEL :06-6915-4247
E-mail :contact-happiness@torogi.net
【革製品製造の技術指導/協力会社】
会社名 :株式会社Lilyleather Design
住所 :〒532-0001
大阪市淀川区十八条2-16-16-33
ホームページ :https://lily-design.com
設立 :2009年9月
代表者 :大城 秀林
事業内容 :革製品のオーダーメイド製造販売
【インタビューアー】
福祉バンク株式会社
東京都新宿区西新宿三丁目3番 13号 西新宿水間ビル6階
~障がい者の個性に合わせたオシゴトを~
TEL:03-6868-5725
Mail:shiraishi@fukushibank.co.jp
担当:白石直之